めちゃくちゃ久々に小説読んだ。
なんとなく表紙に惹かれて手に取って帯をみたところ、面白そうだったので買ってみた。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位の人の作品らしいし。
作者はソン・ウォンピョンさん。
1979年、韓国・ソウル生まれ。大学で社会学と哲学を学んだそうです。
2016年に初の長編小説「アーモンド」を出版。2019年に日本語訳版が発売されて2020年の本屋大賞で翻訳小説部門で1位を見事受賞。
私とギリ同世代。小学校あたりでソウルオリンピックを体験したりサムスン電子がどんどん大きくなったり韓国が発展してる姿を間近で見ていただろう世代な気がするが、日本から見えてる姿と韓国の内部から見てる姿は違うだろうからどんな事を思いながら育ったんでしょうか。
訳者は矢島暁子さん。学習院大学を卒業後に韓国の大学院に進学して修士号を取得しているみたいです。ソン・ウォンピョンさんの訳本たぶん全部この人が訳者みたいです。
言葉のニュアンスの表現とか訳本は訳者の能力にすごく左右されると思っているので、本屋大賞取るくらいなので、良い訳者なのではないかと思います。
あらすじ
1988年ソウルオリンピックで国中が盛り上がっていた年に生まれた、ありふれた名前のキム・ジヘ。ありふれた名前の通りにありふれた学生生活をし、ありふれた就職失敗。正社員になかなかなれず30歳を過ぎてインターンとして大企業DMグループの一つ「ディアマンアカデミー」で働きだす。
ある日、講師であるパク教授の忘れ物を届けに待ち合わせのカフェにいたところ、パク教授が入って来た際に、パク教授の大声で抗議する男性を見かける。なんとか忘れ物を渡してその場を後にするがその後、新しいインターンの募集で入って来たのはカフェで大声をあげていた男性だった。
大声をあげていた男性の名前はギュオク。職場ではあの時のような大胆な行動をとるような姿は見せずにまじめに働いていた。
職場ではインターンは一つ講座を無料で受講できるのだが、ギュオクから一緒にウクレレの講座を受けないかと誘いを受ける。そしてこの講座を受けた事から彼女たちはある企みを始める。
韓国の小説だけど、今まで読んだ日本の小説のどれより登場人物と自分を重ね合わせやすかった。
社会や会社に対する不満、閉塞感、そしてどうしようもないだろうと言う諦め。
どんな反撃をするのだろうとわくわくして読んだけど、ちょっと違った。
帯ではすべての人に勇気をくれるとあるが、正直、勇気をもらえる人は何人いるんだろう。
帯書いてるやつは私が苦手な超ポジティブな人なんじゃなかろうか。
小説だからあたり前だけど、それなりにご都合主義で現実はこんな風にはいかない。
と、こんな事を書くと小説面白くなさそうと思うかも知れないけど、そんなことないです。
とっても読みやすい。翻訳者の矢島暁子さんが巧みなんだろけど、すごく読みやすい。
物語の主軸がずれない程度に恋愛模様があったり、緩急もあって楽しい。
そして別に浮世離れした事が書いてるわけではない。
やろうと思えばきっとこれくらいやれる。
そう言う意味で勇気づけられる人もいるのかも知れない。
ただ、じゃあ小説に書かれているような行動がとれるかと言われたら、私には無理です。
職場の人に愚痴ってたら小説と同じような事を言われた覚えがある。
そして多分、出来る人には出来ちゃう。
でも、私には出来ないです。
それを言うとじゃあずっと閉塞感の中で生きて行くんだねと言われそう。
だけど、それも違うと思う。
若い頃の自分ならそう思ってこじらしていた気もするが歳を重ねて思うけど、そう言うもんでもないんだよね。
時間ってすごいもので自分の中で抱えてるものって、解決してようがしてまいが少しずつ昇華されて行ってる気がする。
別にあきらめもしてなきゃ能動的になってるわけでもない。
なんかそこが最終的にこの本に対して違和感になってる気がする。
と言いつつ、そこそこの値段する割に損した気には全くなってないので良い本なんだと思う。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位を取ったのはこれ