飛ばない豚

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「のぞきめ」三津田信三 映画と同じだと思うと後悔する!まるで実話のようなホラー小説

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※そもそもネタバレ満載なブログですが、これもネタバレ満載なのでネタバレしても良いって方だけ見て下さい。

 

「のぞきめ」三津田信三 角川ホラー文庫

のぞきめ (角川ホラー文庫)

映画を先に見ていたのですが、最近、kindleでセールしてたので買いました。

映画があれなんで、全然期待してないかったのですが見事に裏切られました!

 

あらすじ

小説家の三津田信三は、編集者時代に利倉成留(とくらしげる)から恐ろしい怪異の話を聞く、また作家になってから、南雲桂喜(なぐもけいき)と言うライターから四十澤想一(あいざわそういち)の出会った怪異が記載された大学ノートを手に入れる。

物語は主に「覗き屋敷の怪」「終い屋敷の凶」の二編で、「覗き屋敷の怪」では利倉成留の「終い屋敷の凶」では四十澤想一の怪異について書かれている。

 

 序章

序章では作者が利倉と知り合って、利倉から大学時代に別荘地にアルバイトに行って出会った怪異の話を聞いて「覗き屋敷の怪」と名付けるが大学ノートに記載してその時は満足してしまった。

また、作家になってから南雲と出会い、そこで四十澤の著書に「覗木子」について書かれている話を聞く、さらにその最後には「のぞきめ」について書かれているという話を聞く。

後日、南雲に会うと南雲は四十澤の家にうまく入りこみ「のぞきめ」について記載された大学ノートを手に入れていた。

南雲から大学ノートを売りつけられそうになるが、断る。

後日、南雲からノートが送られてきてので、四十澤に連絡を取ってノートを返却するが、四年後に四十澤が亡くなり、遺言でノートを寄贈する旨があったため作者はノートを手に入れる。

南雲からは読まないように警告を受けるが、作者は読んでしまう。

読み進めて行くうちに、利倉から聞いた「覗き屋敷の怪」の中で出てくる廃村の五十年前の話だとわかる。

そこで「覗き屋敷の怪」と四十澤の話に「終い屋敷の凶」と名をつけて発表することにする。

 

 

 

まぁあくまで序章なので全然コワい感じはありませんが、最後にこの続きを読むなら覚悟してくださいみたいな事が書かれています。

 

覗き屋敷の怪

利倉成留は大学の四年の夏休みにKリゾートと言う貸別荘でアルバイトをした。

アルバイトは男二人女二人で彩子、和世、勇太郎。

四人のうち三人はKリゾートがある、山に入ったあたりで嫌な気配を感じる。

Kリゾートでは管理人の三野辺から決められた散策コースから外れない事、巡礼者に出会ったら絶対に一人で対応せず、三野辺に知らせるように忠告を受ける。

 

しかしアルバイト期間もあと少しで終わる頃に、和世がある巡礼者母娘に出会い、三野辺の忠告を無視して対応してしまう。

その時に巡礼者に連れられて「ろくぶ峠」と言う場所に行く。

その後、四人で「ろくぶ峠」に向かう。

「ろくぶ峠」では遠くに廃村が見える。そして和世が村に行こうと言い出して進んでしまうため、三人も付き合って村へ向かう。

そこで和世と勇太郎に異変が起きる。

四人は村から逃げ出すが、その際に村中から覗かれている視線を感じる。

さらにKリゾートに戻る途中で鈴の音に追いかけられる。

Kリゾートに戻ってからも和世と勇太郎には異変があったため、二人はバイトを辞める。

しかし家に帰るため送られた最寄り駅の階段で勇太郎が転落死する。

数日後、実家に戻った和世から異変を知らせる電話が届く。

その後二人はバイトを辞めることにするが、廃村に行った話を三野辺にすると、三野辺の態度が一変して、半ば追い出されたような形で帰路につく。

その後、和世の家を訪問するが和世は部屋からこもって出てこない。

翌日、彩子と成留は奈良の拝み屋を訪ねる。

拝み屋にお祓いを受けその後、和世の家に拝み屋と向かう。

拝み屋に半日ほどお祓いを受け和世は元に戻るが数週間後、和世は行方不明になりその後、死体で見つかる。和世は巡礼者母娘から鈴を受け取っていて、拝み屋がそれを見逃してしまったためだった。その後、鈴は拝み屋の手で処分され、成留と彩子は事なきを得る。

その後、彩子と成留は付き合うが、半年もたたないうちに彩子が物陰から成留をのぞき始めて、二人は別れる。

 

 

 

話のはじめから和世以外はあやしい雰囲気に気づいているのに、まぁ何も起こって無いので当たり前ですが、バイト直前で辞めたりしてないです。

 

なんとなく嫌な予感してるのに止められないってすごく怖いですよね。

 

更にせっかく広大な自然の中にある別荘地なのに、行動範囲が限定されているので、清々しいどころか息苦しい感じに。

 

そして軽い気持ちから発展する災難!

 

怪異と言わず世の中で起こる事件ってこう言う流れで起きてる事がすごく多い気がします。

 

 

そして、和世が亡くなる直前に成留の家に霊みたいに現れるのですが、日常とあまり差異が無い異空間みたいな描写でものすごく怖いです。

 

いつも自分がいる場所なのに何かが違うってこんなに不安な気持ちになるんだなと思いました。

 

終い屋敷の凶

四十澤想一は大学で鞘落惣一(さやおとしそういち)と出会い親友となります。

以前から惣一は自分の故郷の話をしない事が気になっていた想一は思いきって惣一の故郷が被差別部落なのではと問います。

しかしその時は被差別部落ではないと否定のみでした。

その後、民俗学の現地調査でしばらく二人が別れ別れになる前の日に惣一は自分の故郷の呪われた話をします。

惣一の実家は「六部殺し」と言って巡礼者を殺して、その路銀を奪ったりして呪われる家が各地にあるが、それと同じで、巡礼者母娘を殺していました。

その後、鞘落家の人はどこにいても視線を感じるようになる呪いを受けます。

しかし後々、巫女体質の子に怪異が憑依するようになります。

憑依している間は鞘落家には何も起きないため、鞘落家はお金で巫女体質の子を買ってきて、憑依させるようになりますが、しばらく経つと巫女体質の子たちは皆、気が狂います。

そのうち巫女体質の子も鞘落家には来なくなって、だんだんまた怪異が鞘落家を出だします。

この話をしたあと二人はそれぞれ調査に向かって別れますが、想一が調査から戻ると惣一が死んだ事を聞きます。

惣一は何かに追われて崖から落ちて死んだとの事でした。

 

その後、想一は惣一の墓参りに行きたいと思って、鞘落家を訪ねる事にします。

そして旅の途中で今日は鞘落家で葬式がある事を聞きます。

どうしても葬式を見たくなり無理をして村へ向かいます。

村に着くと人の気配を全く感じませんでした。

そして村を進むと、野辺送りに出会います。

小山に隠れて野辺送りを見ていると、最後尾に10歳くらいの女の子がついてきています。

村中を野辺送りが回り、戻ってくると隠れた小山に向かって来たため、想一はさらに奥に隠れます。すると広場に出てそこで死体は火葬にされていました。

当時は土葬が主で火葬されるのは伝染病にかかっているか穢れた死体だけでした。

火葬の時にアクシデントがあって想一はその隙に逃げて鞘落家へ向かいます。

その途中で村の住職と出会います。

鞘落家では歓迎ムードでは無いが、惣一の義理の姉の季子(ときこ)に出会い、癒されます。

また、葬式は惣一の祖母の小能枝刀自(このえとじ)の葬式だとわかります。

鞘落家では野辺送りの際にみた女の子を見てしまいそれが、他の人には見えていないようで、怪異ではないかと想一は考えます。

次の日、惣一の墓参りに行った際に巡礼者母娘を鎮めるために建てられた巡鈴堂と祠を見ます。その際に季子の子供、昭一から季子が巡礼堂にお供えをする役でそれを恐ろしいと言っていたことを聞かされます。

そして住職に夕食に誘われた想一はその前にろくぶ峠に行くことにします。

ろくぶ峠に向かう途中、想一は村々の家から自分が覗かれている事に気づきます。

ろくぶ峠では巡礼者の少女たちの幻影を見ます。

その後、戻り道の途中で、想一は再び怪異を目撃してしまいます。

命からがら、住職のお寺に着くと住職は手厚くもてなしてくれました。

住職に話を聞くと、小能枝刀自は旅芸人の出である事、なぜ鞘落家の死体は火葬するのかを聞きます。また惣一が亡くなったときの話をすると、惣一が調査に行ったのは憑き物信仰がある地で、惣一は呪いを解く方法を探していた事を教えられます。

さらに四年前に巡礼者の母娘がいて、しかしその娘は巫女体質ではなかったことが語られます。また怪異が想一のもとに現れるのは想一が村の外の人間で興味があるからだと教えれます。

そのうち、惣一の父が亡くなった知らせが来ます。

さらに次の日の早朝に惣一の義理の母が亡くなります。

そして、その日のうちに二人の野辺送りが行われます(普通はそんなにはやくしない)。

その日の夕方、村の別の有力者の家に呼ばれ夕飯を一緒にしながら惣一の思い出話に花を咲かせます。その晩、鞘落家に戻った想一はぐっすり眠りこけ次の日、寝坊してしまいます。

寝坊して起きると、枕元にぜんまいの様なものが置かれています。

そして朝食を食べに広間へ向かうと、惣一の兄、季子、季子の子供が倒れて死んでいます。

恐れおののき勝手口へ向かうとそちらも使用人が皆死んでいました。

よく見ると枕元にあったぜんまいの様なものがおひたしにされていました。

そしてそれは毒草で、それを食べないように忠告として枕もとに置かれていることを悟ります。

そのうち村の人たちが集団ヒステリーを起こして鞘落家へやってきます。

話を聞くと住職が亡くなったとの事で、鞘落家になにか起こってるに違いないという事で押しかけて来たのでした。

抑えられないことを悟ると、想一はそこから逃げ出しますがどうしても、巡鈴堂の祠が気になって見てしまいます。

その後、想一は無事にろくぶ峠を越えて村から逃げ切ります。

 

 

 

 

怪異に巻き込まれているように延々と描かれていて、読んでいるこちら側もそのつもりなのに、オチは怪異でもなんでもなく、人間の手によるものだったって言うのが恐ろしいです。

 

普段、接している文化と違う文化の中に放り込まれると怪異なんて起きて無いのに怪異の真っ只中にいるように感じてしまうんですね。

 

心理描写が巧みで、たまにある何も起きて無いのに自分の中の恐怖心を自分で煽ってしまう感じがものすごく伝わります。

 

しばらく経って思い返すとこの章は惣一が亡くなるところ以外は怪異なんて起きていないのに、ひと息つく事も出来ないほど怪異に巻き込まれている感覚がしました。

 

終章

想一の大学ノートを読んだ作者はある事を推測します。

成留と彩子が考えていた、怪異がなぜ和世に集中したのかなぜ勇太郎が最初に死んだのか推察では和世だけが巡礼者の母娘に出会っている事とそんな和世の面倒を勇太郎が見たからだとしていたが、作者は和世に対する推察はその通りで勇太郎は実は住職の子孫でその因縁ではないかと推察します。

また祓われたあと、彩子に障り(さわり)がでたのは彼女が巫女体質だったためではないかと推察します。

 

作者の推察では実は鞘落家では巫女体質の子がいないのに何もしなかったわけではなくて、四年前に訪れた巡礼者母娘の母が病弱で面倒をみるかわりに娘に、鞘落家に降りかかる災厄を負う役目をさせたのではないかと考えます。

つまり想一があった怪異はその少女だったと。

その女の子を従わせるために、母親を人質にしていたが、母親が亡くなってそれをばれないように旅芸人出身の小能枝刀自に母親の役目をさせていたが、小能枝刀自が亡くなってその代わりを季子がやっていたため、季子は恐ろしいと漏らしていたのではないか。

しかし効果があったかどうかは不明である。惣一のもとには怪異が現れていたため失敗だったと思われる。

そして母親が亡くなっていた事に気づいた少女は鞘落家に復讐を考えて、鞘落家の人々を次々いてに殺していった。

しかし、復讐を終えた少女がどこに行ったかと言う疑問が出てくるが、それを想一が見つけてそれが四十澤夫人ではないか。

 

しかし四十澤想一はなぜ作者にこの大学ノートを渡したのか疑問に考える。

下手な使われ方をしたら怪異の障りが世間に蔓延する可能性がある事を彼が考えないわけがない。

ひょっとすると想一は鞘落家が受けたような不条理な差別が許せなくて、それは閉鎖的な村の中だけではなく、社会にもあり得る事と考えて、社会に復讐しようとしたのではないか。作者の手を借りて。

僕が図らずものぞきめの語り部になったのかどうか、それはあなたがどんな体験をしたかに拠りそうだ。仮に怖い目に遭ったとしても、どうか僕を恨まないで欲しい。最初に忠告したのは、そのためだったのだからーーー。

出典:「のぞきめ」三津田信三 角川ミステリー文庫

 

 

 

いやーもう最後の一文が本当にひどいです。マジで後悔しまくりです。ただでさえ怖がりなのに、こんなん書かれていたら一人でトイレいけません。

大人用の紙おむつ買ってこなきゃ。

 

この章も怪異なんて起きていません。

 

単なる独白でしかないたはずなのに、最後の一文で一気にまた怪異のただ中に引き戻されました。

 

さらに読者に突きつけられる命題。

逃れるためには読者も怪異の片棒を担がなきゃいけません。

恐怖心から逃れるためにはしょうがありませんが、このなんとも言えない背徳感と言うか罪悪感はなんでしょう。

 

読み終わった後すら安らぎを与えない、ものすごく恐ろしい小説であると共に、作者の筆力のすごさにただ脱帽するかぎりです。

 

 

って書いてる間にこんな時間ですよ。。。もうどこにも行けない、朝まで震えてるしかないっす。

皆さんも読むときは覚悟して下さい。 

 

のぞきめ (角川ホラー文庫)

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